ドアの内張りを外したいときがあります。workshopでもドアの内張りを外して作業するものがいくつか紹介されています。説明が始まるとどれも既に内張りが外されています。
それなら内張りは簡単に外れるものと思って、クリップやスクリューを外していきます。しかし、ひとつだけ外れないものがあります。窓ガラスを上下するレギュレータハンドルです。サービスマニュアルには「ピンを先端を曲げたピアノ線のようなもので外し」とは書いてありますが、いまいち良くわかりません。
外すピンがどのような大きさでどのような構造でついているものかがわからないのに「先端を曲げたピアノ線のようなもの」を自作しろというのは無理です。達人はマイナスドライバーの先なんかでさっさと器用に外してしまいますので治具は要りませんが、私はそうはいきません。直径2mmの鉄材で治具を作ったこともありましたが、使い心地がいまひとつでした。
そこで、入手可能なもので治具として使えるものを探してみました。
いきなりですが図は結論です。編み物で使う「かぎ針」です。毛糸用の2号(2.0mm)と4号(2.5mm)です。レース用ではありません。私は100均ショップで入手しました。試してみて使えたのはこの2種類です。3号がこの図にありませんが、あれば中間のサイズですから使えるでしょう。
図のかぎ針は長さが14センチメートルありレギュレータハンドルより長いのでこの治具だけで使えますが、短ければ治具をさらにペンチ等でつかむ必要がありますので、あまり短いものはお勧めしません。
レギュレータハンドルがどうやってシャフトにくっついているのかの構造を理解します。図はレギュレータハンドルを外した状態です。シャフトには一周回っている溝があります。
溝にはオメガ型のピンがはまっています。ピンはシャフトの溝と同時にレギュレータハンドル(図にはありません)にもはまっています。このピンによりレギュレータハンドルが使用中に抜けないようになっています。レギュレータハンドルを外すにはこのピンを抜かなくてはなりません。
図はレギュレータハンドルにはまっているピンを金色のかぎ針で外そうとしているところです。実際に外すところは見えないのでレギュレータハンドルを外した状態で撮影しています。
オメガ型のピンをレギュレータハンドルの先端方向にひっかけて抜きます。ピンは薄い樹脂のプレートを挟んでレギュレータハンドルにはまっています。4号(2.5mm)より大きなかぎ針は「あご」部分より先端が長いのでレギュレータハンドルの中心部に当たってピンを引っ掛けることができません。反対にあまり小さなかぎ針はピンを引っ掛けることができません。
構造がわかったところで作業方法です。レギュレータハンドルの角度はどこでも構いません。ガラスが半開きでも気にせず、レギュレータハンドルは作業し易い角度にしてください。そして、かぎ針を薄い樹脂のプレートと内張りの間に滑り込ませます。かぎ針でピンをひっかけることができたらレギュレータハンドルの先端方向に引き抜きます。
ピンはたいてい下に落ちるので、ドアを開けて作業をしている場合はなくさないように注意しましょう(特に砂利敷き)。この作業だけドアを閉めて行い、ピンが車内に落ちるようにするのも一手です。ピンが抜ければレギュレータハンドルはシャフトの方向に抜けます。
一番の難関であるレギュレータハンドルが外れたら、クリップやスクリューを外して、内張りを外します。作業を終了したらクリップやスクリューをつけて内張りを装着します。レギュレータハンドルを取り付ける前に、まずピンをセットしない状態で仮付けしてシャフトを回し窓ガラスを閉めます。そうすると閉まったときのシャフトの位置が決まるので好みの角度でレギュレータハンドルを本付けできます。したがって、レギュレータハンドルの取り外し時に角度をマーキングする必要はありません。
レギュレータハンドルの本付けはプレートとピンをセットして車外方向に押し付けます。「カチッ」という感触がしてピンが溝にはまります。好みの角度でなかったらピンを外してやりなおしましょう。
「自己責任」はお約束です。とがった道具や部品を扱うので怪我にはお気をつけください。